カナダで開いたログハウスの学校
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ログハウスHOME > エッセイ>カナダのログハウスのスクール第7回
第7回 once in a life time builder

 once in a life time builder。「生涯に一度、自分のための家を自分で作る人」とでも訳せるだろうか。

 カルガリーの弁護士ホールズワース氏はそんなonce in a life time builderのひとりだった。

 ビルダーや他の専門家の手を借り、教えてもらいながらだから、純粋な意味での builderとは言えないかもしれないが、祖父から父へと続いた希望を受け継ぎ10年以上の歳月を費やして壮大な家を作り続けている。

 その心意気はやはりonce in a life time builderと呼びたい

  • 第1回 スクールを開いたいきさつ 

    第2回 スクールでの楽しき日々 

    第3回 アウトドアの天国 

    第4回 ログの完成そして旅へ

    第5回 エド・キャンベル

    第6回 出あったログハウスたち

    第7回 once in a life time builder

    第8回 ログハウス見学の旅

    第9回 シャトーモンテベーロ


    第1回  目次

  • title外観


    title寝室


    titleロフト


    カナダでのログハウスの学校
    毎日グラフ記事【第一回】カナダスクール
    アサヒグラフ 【第ニ回】カナダスクール

    このエッセイは第一回のスクールをもとし
    ている。

     

     

     

     

    1.広大な草原地帯を行く

    スクールサイト 10月11日バンフ・パークロッジをスタートしてカナディアン・ロッキーを超えアルバータ州に入る。是非見せ
    たい素晴らしいログハウスがあるとダンが言う。
     それは、私のログハウスの師匠であるアラン・マッキー氏が著したピクチャーブックの表紙を飾っていて
    家であり、「いつかは見たいものだ」と憧れていた家だった。思いがけずその家が見学出来ると知り期待に胸をふくらませる。
     ハイウエイを外れ、アルバータ州の広大な草原地帯をしばらく走っていると、やがてそれらしき建物が遠くに見え始め、次第にズームインし、やがて写真集で見覚えのあるその建物が全貌を現した。想像した以上に存在感のある魅力溢れる外観だった。

    ダンとオーナー オーナーのホールズワース氏はカルガリーで弁護士業を営んでいる。カルガリー(Calgary)は、カナダ、アルバータ州最大の都市。カナディアンロッキーから東に およそ80km、人口は107万とカナダでは大都市である
     ダンに紹介して貰った後、早速案内して貰った。石貼りの一階部分の上に丸太の壁が載り、屋根裏も含め3層になっている。

    外観B

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    2.ホールズワース家三代の夢

    2-1家の歴史

      ログハウス見学ツアーのなかで何棟もの家を見たが中でもこのホールズワースさんの家は強く印象に残った。 土地の広さが160エイカー(約20万坪)もある。国土の大きなカナダとはいえ、これは結構な広さだ。
     20世紀初頭、祖父のロン・ホールズワース氏が購入したものである。20世紀始めと言えばまだ開拓者の名残が色濃く残っている時代だろう。いずれはここに素晴らしい家を建てようと夢みたに違いない。それが子へと受け継がれその夢が孫の代で実現した。

     自分のための家を自分で作るのだから、採算を考える必要はない。仕事にはつきものの納期というの
    もない。いくら時間を掛けようが(楽しみにまっている家族以外は)誰も文句は言わない。

    ダブテイル

     この家は10年を経ても未完成である。どこまで行っても100%満足の行く家は永久に完成しないだろう。

     彼が求めているのは作っていくその過程そのものだろうから。

    2-2 ログハウスを建てるという大事業

     家を作るというのは大事業である。技術も経験もない素人が、仕事を抱えながら休みを利用してコツコツやるのである。全ての工事をやろうと思えば、予定通りの期間で完成することはまず少ない。どんな小さな家でも3年はかかる。

     ところでログの部分を受け持ち、ホールズワース氏の師匠でもあるブライアン・ロイドはアラン・マッキーさんのログビルディング・スクールの卒業生、私にとっては大先輩にあたる。

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    3.家の概要

    3-1 ログハウスの見本

    ダブテイル 延べ床面積742u(225坪)もの大きさであり 、相当に複雑な形をしている。家の中で迷子になりそうだ。
     複雑なプランということは必然的に屋根の形も屋根を支えるトラス構造も複雑で難しい組方になっていく。天井を見上げると(どんな風に組んだのだろうか?)と頭の中がクエスチョンマークだらけになる。
     居間には石組みの暖炉がどっしりと聳え立ち、吹き抜け空間を構成する丸太のトラスとロフトの手摺との間で絶妙のバランスを保っている。

     この家は・典型的なラウンドノッチ ・ピースエンピース ・120度の角度で組まれたノッチ  ・ダブテイルコーナー ・ポスト&ビーム・・・五つ技術が込められたログハウスの見本のような家だ。

    ◆右:ダブテイルコーナーで組まれたログの壁面
    ◆写真下左:6箇所ある暖炉の一つ
    ◆写真下右:複雑に組まれた小屋組み

    暖炉3 小屋組み

    ◆図面:一階フロア

    一階図面

     

    3-2 ホールズワースの遊び心

    寝室家のあちこちにオーナーの遊び心と思い入れの深さを感じる。
    使用しているログは意外に細いが、重量感、威圧感が薄れ、かえって木のもつ暖かな質感を感じさせて心地良い。
    暖炉が6ケ所 浴槽が5つある。

    「内装、電気や水道の設備工事、暖炉などもそれぞれの分野の専門家に教えを請い勉強しながら、コツコツとやってきた。もう何年かかかりそうだよ」と話してくれた。
    これまでかけて来た時間と労力、一つ一つ技術を覚えそれを実際の建物で実行して出来たときの満足感。その膨大な経験の積み重ね。それは腕と心に染み付き、その一瞬一瞬が歓びだったことだろう。

    2-3 見果てぬ夢

    暖炉2 ホーズワースさんの家を離れ、アルバータ州の広大な草原地帯を走るバスの中で思った。
     『once in a life time  builderの道は選ばなかったが、時間が持てるようになったらいつかは自分も、奥深い山中にこもってコツコツと、あんな家を作れたら良いな』、と夢想した事を今でも時々思いだす。

     結局それはいまだに果たされず、そして、どうやら見果てぬ夢に終わりそうなのだが・・・・。

     

     


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