多くのログハウスを見学したが一棟として同じような家はなかった。生き方が違えば、それを入れる器「家」も異なって当然だ。ログハウスに住む人たちの悠々とした生活をみて考えさせられる事も多かった。
彼らは我々に対して皆フレンドリーであった。エドの家とそのジョブサイトを皮切りに、ダンや他のプロフェッショナルなビルダーの建てた家、短い間に様々なログハウスを見ることが来た。
どんなログハウスが待っているのだろう。それぞれの思いと期待を乗せてログハウス見学のツアーは続く。
第1回 スクールを開いたいきさつ
第2回 スクールでの楽しき日々
第3回 アウトドアの天国
第4回 ログの完成そして旅へ
第5回 エド・キャンベル
第6回 出あったログハウスたち
第7回 once in a life time builder
第8回 ログハウス見学の旅
第9回 シャトーモンテベーロ
第1回 目次
1.ドイツから移住したカーペンター
小高い見晴らしの良い地に建っているプロのビルダーの住む家を案内してもらった。他のログハウスとは一味違うデザインである。聞くとドイツから移住してきたのだという。一通り家を見せてもらった後、奥さんの手作りのクッキーと紅茶をご馳走になりながら話しを聞いた。
それが彼の仕事と生活の流儀で、旅をして歩きながら気に入った土地に出会うとオーナーに交渉して土地を分けて貰い、まずそこに自分達の住むログハウスを建てる。その地でビルダーとして仕事をしながら、暫く暮らした後家を売りに出す。売れるとまた新天地を求めて旅に出る。そんな生活を繰り返す。
「売れなければ?」と訊ねると「そしたら売れるまでここで暮らせば良い、慌てることはない」。そんな会話を横で奥さんがニコニコしながら聞いている。年齢は?40台だろうか。
自分の気に入った土地に自分の住みたい家を建てる。ある時期をそこで過ごし、やがて次の地を求めて移り住んでいく。仕事と生活とが人生観と無理なく結びついている。なるほどそんな生き方もあるのかと考えさせられた。
そんな生活が可能なのも、自分の腕に自信があるからこそであろう。理想の土地に、納得のいく理想の家を建て、いつかはそこに落ち着くのだろうか。
いろいろな生き方がある。ログハウス作りを仕事として選ぶ、あるいは自分の家をログで建てる、それはその人の人生における大きな選択を意味しているように思える。
2.猫と暮らす家
まず使用している丸太の太さに圧倒された。壁の丸太を数えてみると一階で5 〜6段 丸太の太さは50〜60センチ前後もある。普通のログハウスは直径が30〜35cmくらいだから、断面積は約4倍以上、10mの丸太なら多分2トン近くにもなるだろう。
家が大きいので不思議とそれほど太いという感じがしない。バランスが取れているからだろう。
キッチンとリビングは三階にあり、アーチウエイ(ログの間仕切りにカーブを描くこと)を挟んでひとつの大きな空間をなしている。
オーナーの女性は独身で猫と一緒に住み、我々を案内している間ずーっと猫を抱いている。名前を聞き忘れたので、「猫のおばさん」、と、勝手に名づけた。
ベランダの外には湖が拡がっていて家から直接湖に飛び込めそうなほどだ。カナダは森と湖の国、湖の数は200万以上ともいわれる。 この家もそんな湖に面したカナダらしい景色に囲まれたログハウスだった。
3.ダン・ミルンの建てたログハウス
3-1. 森のログハウス
シダーの大木に囲まれた小道を辿っていくとこのログハウスが見えてきて、木の階段を登っていくと全貌が見えてくる。
家のリビングに入ると真っ先に石で組んだ暖炉が目に飛び込んでくる。わざと薄皮を残しているので丸太は少しマダラ模様で、それが内部空間に落ち着いた雰囲気をもたらしている。
樹に囲まれた環境といい家の雰囲気といい、森の中にひっそりと佇むこの家はいかにも私のイメージしているログハウスらしいログだった。
近郊に住宅として建てられるログハウスもいいが、やはり大自然に抱かれた場所こそ 似つかわしい。
のちに「ログハウスのつくり方」(山と渓谷社)という本のグラビアに使わせてもらった
3-2.ピースエンピースのログハウス
他にもダンの建てた家を何棟か案内してもらったが、最も印象にのこったのが、このピースエンピースのログハウスだった。日本ではあまり馴染がないが、カナダではごく一般的にみられるログハウスの工法の一種だ。
柱、梁、小屋組みを丸太で作りその間に短い丸太を積み上げていく工法である。構法的には丸太組工法ではなく軸組工法の範疇に入る。
このログハウスでさらに特徴的なのは使用する丸太の4面を手作業で平らにカットしていることだ。
ブロードアックスという道具で丸太を平らにカットする。形は違うが日本でいえばチョウナだ。
このブロードアックスを使いこなせるプロのビルダーは多くはない。失われつつある職人技のひとつでダンはその数少ない技術の持ち主の一人。
◆写真右上:オーナーと話をするダン・ミルン
◆写真右下:正方形のシンプルな外観
床や壁は未仕上げであり。家族力を合わせて仕上げる予定だ。住める状態まではダンが作っているので、あとは住みながらぼちぼち仕上げて行けば良い。
正方形のログをぐるりと囲む正方形のデッキとバルコニー、内部には正方形の大きな吹き抜け、非常にシンプルな250坪ほどの大きな家だ。オーナーは40台の麻酔医師。
◆写真右上:
斧を振るっているのは私の師匠であるアランマッキーさん。ログビルディングスクールでの一コマである。
◆写真下左:見学する生徒たち。その広さが羨ましそう
◆写真下右:表面を平にカットした丸太。丸い部分が残っているのが分かるだろうか
ブロードアックスという道具で丸太を平らにカットしている。形は違うが日本でいえばチョウナだ。
このブロードアックスを使いこなせるのはプロのビルダーでも数は少ない。失われつつある職人技のひとつだ。
ダンはその数少ない技術の持ち主の一人。
見た感じも手づくりの良さが感じられるが、それと同時に機械を使用するのに比べ、木の繊維を壊さないので
耐久性の面でも優れている。
斧を振るっているのは私の師匠であるアランマッキーさん。ログビルディングスクールでの一コマである。
立って見ているのは私の同級生。
◆写真右上:ブロードアックスで丸太を平らにカットしている所。
4.ログハウスのホテル
10月11日バンフパークロッジを出てレイクルイーズへ向かう。景色を楽しみながら20分ほど走ると、レイクルイーズスキー場のふもとででログハウスのホテル作業現場に出会った。予定を少し変更して見学することにした。
ビルダーはオランダ人、スプルースという樹種を使ったかなり大型の建物だった。基本的には同じ丸太組工法だがボックスノッチという独特のノッチ(コーナー部分の切り込み)で造られている。ビルダーに尋ねるとB・C州のどこかで習ったということだった。輪切りになった丸太を仮の基礎として、二か所に分けて組み上げられている。一階部分は出来上がりこれから小屋組みにかかるのだろう。ピーリング(皮むき)を待っている太い丸太が転がっている。
ここで仮組してどこかに運びホテルとして建てるられる。6〜700坪あるだろうか。
「結構荒っぽいな仕上だな」という印象を受けた。