エド・キャンベル物語 第12回 ログハウスを建てたかった理由
日本でもなじみの深い、カナダのマスタービルダー
エド・キャンベルの自伝最終回
連載を終えるにあたり、なぜログハウスづくりを志したのか、そしてログハウスの魅力とは何かを語ってもらった。
■主な内容
家族アドベンチャーの目的地ブリティッシュ・コロンビア州
到着、バンクーバー島の自然を楽しみ、 カムループス
に腰を落ち着けた 初めて太平洋を見、その時、「いつかは日本にログハウス を」
と夢見た。
エド・キャンベルの自伝最終回
連載を終えるにあたり、なぜログハウスづくりを志したのか、そしてログハウスの魅力とは何かを語ってもらった。
■主な内容
到着、バンクーバー島の自然を楽しみ、 カムループス
に腰を落ち着けた
第7回 ログの仕事をスタート
第8回 ログビルダーへの道
第9回 父の思い出 前編
第10回 父の思い出 後編
第11回 一家の新たな冒険
最終回 ログハウスを建てたかった理由
第一回に戻る最終回 目次
関連ペイジ
→エド・キャンベル紹介
→エド・キャンベル (雑誌記事)
1. 初めてみた大洋
ビクトリアにてトーテムポールをみる 左からアイリーン、ブライアン、ブレンダ |
私と私の家族にとって、BC洲への旅はとてもエキサイティングなものでした。かってロッキーのような山をみたことはありませんでしたし、それらに囲まれていることは、本当にスリリングな体験でした。
初めてバンクーバーの町をみたとき、私たちは「こんな美しい町があるなんて」と、信じられない思いでした。
バンクーバーは海に面し、周りを山にかこまれているのです。私たちが住んでいたのは海から遠く離れていた場所だったので、大洋を見るのは、実はこれが始めてだったのです。
私たちはバンクーバーに2日間滞在し、そこからフェリーボートでバンクーバー島に渡りました。これはまた別な意味でわくわくする体験でした。湾に点在する島々の間を抜けて行くこの旅は、大変興味深く、美しい景観を楽しむことができました。
バンクーバー島の人々の多彩な生活
これらの島々には多くの人々が住み、独特のライフスタイルをエンジョイしているのです。またクラフトマンもたくさん住んでおり、いろいろ面白いものを作っているのです。
一部の人々は大金持ちで大きな家に住んでいますが、それ以外の人々はそれほど金持ちではなく、
作家であったり、陶芸やウッドクラフトで生計を立てたりとさまざまです。
バンクーバー島では、私たちはいろいろな場所に行き、できるだけ多くのものを子供達に見せるようにしました。美しいブッチャーカーデン、ビクトリアのシーランドーでのホエールウォッチング、パークスビルの巨木などを見たり、ビクトリア市にある博物館を訪れたりもしました。この博物館は、これから私たち家族の第二の故郷となるべきこの地を理解するためには、とても良いことでした。
「いつかは日本へ」の志が芽生える
私たちはさらに足を延ばしてバンクーバー島の西岸にあるトフィーノを訪れ、カナダと日本を隔てている太平洋をみました。そのとき私は、いつの日かこの大海を渡り、日本を訪れたいと切望したものでした。
ここバンクーバーに至る2週間にも及ぶ旅とキャンピングを、私たち家族は本当にたのしみ、いろいろな楽しいことを経験することができました。自分の国を旅し、自分の国を理解し、同じようにこの国を故郷と呼ぶたくさんの多様な人たちがいるのだということを知ることは、とても大切なことだと思うのです。
2.カムループスでの生活を始める
カムループスにあった自宅。この後ログハウスを造る |
電話会社で職を得る
8月の最後の週、私たち一家はカムループスに引き返し、住むべき家を探し始めました。電話会社に就職を申し込み、その場で採用されたのは、電話の仕事で経験を積んでいたからです。ですから、彼らは喜んで私を迎え入れてくれました。私たちは町中に家を求め、新しい生活を開始しました。ここは住み良い場所で、徐々に友達もでき始めていきました。
天の恵みに感謝
週末になると、私たちはよく、カントリーサイドを探検して回りました。友人のビル・リングには、キャンプや釣りに適した場所に連れて行ってもらいました。そこで好きな釣りをしたり、秋には、鹿やムースのハンテ ィングを楽しみました。最初のシーズンに、私はどう にか鹿2頭とムース1頭を仕留めることができました。
友人のビル・リングとともにカヌーを楽しむ |
野生動物の肉は健康的で、しかも非常においしいのです。幸運なことに、そのシーズンは、野生のアヒルも雷鳥も仕留めることができました。こちらのほうは、チキンによく似た味です。
自然は私たちに特別な食べ物を与えてくれ、私たちはその恵みに対して感謝したものです。
3. 私がログハウスを建てたかった理由
森林資源に恵まれたカナダ |
このログハウスづくりに関しては、以前紹介しましたよね。ですからこの物語を終えるにあたって、私がなぜログハウスを建てようと決心したのかをお話したいと思います。
私の人生のすべてを通して、私は常に自然を身近に感じて過ごし、自然の事物を楽しんできました。子供の頃私は、石造りの家に住んでいました。そこはとても興味深い家ではありましたが、冬は非常に寒い家でした。
造る家は特別なものにしたい
その後私は2×4の家を造ったり、ほかのさまざまなタイプの家に住 んできました。
それがカントリーサイドに家を欲しいと思った理由です が、アイリーンと私は、この家はこれまでとは違う、特別なものにしたいと、強く思ったのです。
木は自然の建築資材 |
そこでまず、家づくりに関するいろいろな情報を集めることから始めました。 そんな情報の中に、土でできた家がありました。これはソッドハウスと呼ばれ、150年前に平原に初めて建てられたそうですが、もはやポピュラーではありませんでした。
藁(わら)でできた家もありました。これは暖かく安価にできるので、いまでもこのタイプの家を建てる人がいます。
また、地中に造る家もありました。この家は冬暖かく、夏は涼しいのが特徴です。3mの深さの地下は、一年中摂氏10度と保つといわれています。
コンクリートで建てられる家ももちろんありますが、これは主に大きな建物、例えばアパートメントなどに見られるものです。
4. ログはナチュラルな建築素材
カナダの初期、およそ200年前には、スカンジナビアから移住してきた人々が住んでいました。彼らはいろいろなタイプのログハウスの造り方を知っていて、カナダ中に多くの、それもさまざまな形のログハウスを建てたのです。
そんな、家についての研究を重ねた結果、私たちは、自分達の住む家はログハウスであるべきだと決めました。
エドが日本で建てたログハウス1 |
直接森から得られる建築素材
ブリティッシュコロンビア(BC)州は良材にめぐまれているので、もし仕事の大半を自分達の力でやれば、快適な家がローコストでできると考えたのです。
ログはナチュラルな建築素材であり、直接森から得ることができるのです。何しろ皮むきさえすれば、そのまま使えるのですから。 互いにフィットするように必要な形にカットし、一本一本積み重ねていけば、ログハウスはできていきます。
エドが日本で建てたログハウス2 |
丸太という自然の素材でできて、自然そのものの家ですから、家を飾るために我々は、他の自然素材を使うこともできます。
階段も丸太で造ることができます。丸太の手摺や家具は、ログハウスに良く似合います。動物や魚、山々の景色や花を描いた絵は、丸太の壁に掛けるとよく映えるのです。
岩をログハウスと組み合わせても非常にマッチします。それは、木と石は、自然のなかによく一緒に見られるからでしょう。
ログハウスに住む人たちは、おのずと自然の中に存在する物を自分の生活の中に取り入れようとするようになります。庭造りを楽しむようになり、森のなからから素材を探し、料理を自分で作るようになったり・・・・。
5. この物語を終えるにあたって
エドが日本で建てたログハウス3 |
私は、私たちが長年そうしてきたように、誰もがこのような自然の家に住むことを勧めます。私たちは、
自分達のために3棟のログハウスを建てました。そして、これらの家で子供たちを育て、幸せにくらし、自然を身近に感じできました。
私はこれまでお客様のために150棟のログハウスを建てて来ました。その多くの人たちは、現在もそのログハウスに住み続け、幸福に暮らしています。そんな彼らの多くから、今でもログハウスでの生活を楽しんでいると言って感謝されます。私が最初にログハウスに住みたいと考えたのも、それらの人々と同じ理由からだったに違いありません。
三浦の家庭を訪れたとき |
つまり、自然を身近に感じる家、健康な生活を送れる家を建てたかったのです。
さて私の物語は、とりあえずこれで終わりです。これまで読んでいただいた読者の方々に感謝すると同時に、皆様が幸福で健康な生活をおくられるようお祈りします。また、この機会を与えてくださった「ログハウスプラン」誌と、協力と励ましで支えてくれた、三浦亮三郎、平川隆一両君に感謝致します。
ありがとうございました。