エド・キャンベル物語 第11回 一家の新たな冒険
日本でもなじみの深い、カナダのマスタービルダー
エド・キャンベルの自伝。
■主な内容
エド・キャンベルの自伝。
■主な内容
第7回 ログの仕事をスタート
第8回 ログビルダーへの道
第9回 父の思い出 前編
第10回 父の思い出 後編
第11回 一家の新たな冒険
最終回 ログハウスを建てたかった理由
第一回に戻る第11回 目次
関連ペイジ
→エド・キャンベル紹介
→エド・キャンベル (雑誌記事)
1. 一家の新たな冒険
ノースベイの我が家 |
ノースベイはオンタリオ州の北部にある、湖に面した素敵な町で、家族で、釣りやキャンプ、そしてウォータスポーツを楽しんだものです。それはちょっとした冒険心をかき立てるものでもありましたし、そんな遊びを通じて、多くの友人をつくることが出来ました。
しかし1970年の春になると、これまで勤めていた電話会社の仕事が、なんだかつまらなく感じるようになっていました。何かもっと新しい、そして大きな冒険をしたいと思い始めたのです。
家族会議
私は妻のアイリーンと、当時9歳だったブライアンとともに、家族会議を開きました。
まず決めなくてはならないのは、「どこに行くのか」ということでした。
最初に出た行き先はニュージーランドでした。しかしその地を選べば、カナダから遠く離れてしまいます。
ブライアンは「どこに行くのでもかまわないけれど、カナダを離れるのはいやだ」と言います。
私とアイリーンは、そんな息子の意見を尊重し、ブリティッシュコロンビアに行くことを、全員一致で決めたのです。娘のブレンダはまだ6歳だったので、「私はどこでもいいよ」と言ってくれましたが。
グレートアドベンチャーの開始
ノースベイで別れを惜しんだ後、オシャワに住む両親 に別れを告げた。ここから私たちはグレートアドベンチ ャーに旅立ったのである。
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この冒険旅行のために、私たちは、家と、全ての家具を売らなくてはなりませんでした。なぜなら、これから始まるのは4500kmにも及ぶ旅ですから。荷物を可能な限りコンパクトにする必要があったのです。
そこで、みんなが寝ることができ、なおかつ
食料や衣類を運べるようにと、小さな
キャンピングカーを買いました。
車の屋根には、カヌーと釣り道具をも載せました。
子供たちがゆっくり眠れるようにと、車のバックシートを改造し、ベッドを作りつけました。ですから小さいとは言え、非常に効率的な車になりました。
友人たちとの別れ
友人たちとのお別れパ^ティー |
ノースベイで友人たちと別れを惜しんだあと、私たちは、その他の友人や両親に分かれを告げるために、オシャワの町に戻りました。
アイリーンの母親は、そんなにも遠くに行くことを告げられて動揺しましたが、それでも私たちの幸運を祈ってくれました。
私の両親も、家族が遠く離れていくことを悲しみました。子供たちにしても、いつ再び会えるかわからないので、おじいちゃんやおばあちゃんに「さよなら」を言わなくてはなりませんでした。
みんなと抱き合い、握手を交わし、私たちは後ろ髪を引かれる思いで、グレートアドベンチャーに出発したのです。
ブライアンと友人たちとのお別れパーティー |
ブレンダと友人たちとのお別れパーティー |
カナダについて
BC洲とバンクーバー島 |
ここでカナダについて少し触れておこう
■広さ
カナダの面積は世界2位、の面積は日本の約26倍
ブリティッシュ・コロンビア州(BC洲。左の青い部分)だけで
日本の2.5倍の面積がある。
左に見えるバンクーバー島は九州により やや小さい巨大
な島である。左端にみえるビクトリアはバンクーバー島の中 心の町 (BC洲全体の州都でもある)
■森と湖の国
興味深いのは 国土に閉める水面積(湖や河)は
8.9%に及ぶ。 湖の数は200万とも言われる
■ファミリーアドベンンチュアーの軌跡
オンタリオ州(右茶色の州)→シュペリオル湖→マニトバ
→サスカチュワン州を走り アルバータ州、ロッキー山脈
を越えてブリティッシュ・コロンビア州へ入る
4500キロにも及ぶ 大旅行だった。
2.揺らぐ心と新たな意欲
旅の方針初日のキャンプ |
毎日夕方になると、水泳や釣りを楽しめそうな湖畔のキャンプ地を探し、キャンプファイヤーを焚いて料理したものです。そして寝る前には火の周りに座り将来の計画や、別れてきた友人たちのことを語り合いました。
シュペリオル湖
五大湖 左上がシュペリオル湖 |
サウルトセントメリーの北部のこの一帯は、岩や湖、そして果てしなく続く森林に囲まれた美しい地域でカナディアンシールド、すなわち「カナダの盾」と呼ばれています。山や岩は非常に古く、長い年月をかけて削り取られて低くなり、多くの野生動物が生息し、釣りにも最高の地でした。
こうして4日ほどシュペリオル湖に沿って旅をした後、今度は北に進路をとり、オンタリオ州最北端にあるドライデンという町に向かいました。この町ではホテルに部屋を取りました。久しぶりにシャワーを浴び、快適なベッドで静かに眠りたかったからです。
湖ではカヌーや水泳を楽しんだ |
感傷的な気分から一転
その夜私たちは、改めてこの冒険旅行について話し合いました。なぜなら「この計画は間違っていたのではないか」という考えに捕らわれ始めていたからです。慣れ親しんだ土地を後にし、そこに住む友人達や家族を思い出すたびに、将来への不安が頭をもたげてきたのです。そして「ここから引き返して、我々の友人たちの元に戻ろうか・・・」。その夜は、ほとんどそんな決心をしかけていました。
朝になると、昨夜の感傷的な気分はどこえやら、なんだかみんな勇気にあふれ、この冒険旅行を続けることになりました。
マニトバ州に入る
オンタリオ州とマニトバ州の州境に近づいたころです。周囲の景色が変化してきたことに気付きました。
ここがカナダの大平原、有名な小麦地帯の始まりです。この州境からバンフの山脈地帯に到達するまで4日間を要するとは、その時は気付きもしなかったのですが・・・・。
無限の空と、なだらかに起伏する丘が連なる広大な台地。ここではオンタリオ州やブリティッシュコロンビア州に比べれば、大地がどこまでも平らで、遥か遠くまで見渡すことができるのです。
また、たくさんの湖や池が点在し水辺で遊ぶアヒルやガチョウをみることもできます。そのほかにも、平原に点在する小さな森には、コヨーテやカモシカ、キツネが隠れ住んでいます。
シュペリオル湖のキャンプサイトにて |
平原の夜は、また格別でした。都会から離れたこの場所では、晴れた日の夜、満天の星を眺めることができました。周りに高い山がないせいか、ほかの場所より、空はずっと大きく見えるのです。そして静寂が広がっています。聞こえるのはコヨーテの遠吠えと、フクロウの「ほっほっ」という鳴き声だけでした。星を眺めたり、動物の鳴き声を聞くために、私たちは夜の闇の中を歩いたものです。ある夜などは、オーロラが踊り、宇宙を切り裂く音を聴くことができました。
とは言え、6月の大平原の日中は暑くてたまらないのです。それに追い打ちをかけるかのように、車には冷房がついていないため、全工程のなかでも、最も不快な時期でした。冷たい飲み物を買うためや、日陰に涼を求めてしばしば車を止めるのですが、子供たちはイライラし始め、ちょっとしたことで喧嘩を始めてしまいます。だから、やっと平原を横切り、カルガリーの山並みが見え始めたときは、みなほっとしました。
3. カルガリーでの久しぶりのリラックスタイム
カルガリーのキャンプサイト |
このカルガリーからロッキー山脈を望むことができました。
しばらく山らしき山の姿を見ていなかった私たちは、このおかげで、これからの旅に向けての活力を得ることができました。
ロッキー山脈
ロッキー山脈に入った私たちは、その雄大さに、しばし言葉を失ってしまいました。ハイウエイを走る車の窓外を、次々と新しい景色が飛び去り、いやでも撮影意欲をそそります。そんな中で、初めて目にする動物にも出会いました。
道端で草を食む大ヘラジカ、時には野生の羊の群れが道路を占拠して、交通をストップさせてしまったこともありました。湖岸沿いの湿地帯で草を食べるムースも見ました。クマの姿を発見したのも、この道を走っているときです。ですからキャンプサイトでは注意しなければなりませんでした。
多くの観光客が訪れるルィーズ湖 |
美しいバンフやルイーズ湖
バンフやルイーズ湖の美しさを聴かされていた私たちは、そこに着くのをとても楽しみにしていました。世界中から訪れる人々がそうであるように、私たちも一目で、この美しい地に魅了されてしまいました。
山懐に抱かれたバンフは、大自然の美に囲まれた小さな町です。早速私たちはトラムカーに乗り、山の頂上から壮麗なロッキー山脈を見渡すことにしました。ここには野生の羊が生息しており、間近に見ることができました。それだけではありません。温泉を訪ねたり、山道を探検したり、激流や巨木に驚嘆したり、釣りに興じたり、果てしなく連なる山並みや美しい野生の動物を楽しんだのです。
キャンプサイト |
カムループスに到着
ロッキー山脈を通り抜けるのに3日かかりました。そして、私たちのとりあえずの目的地である、ブリティッシュコロンビア(BC)州のカムループスに到着しました。ここでわたしたちは、大平原、美しいロッキー山脈と、さまざまな風景を楽しんだ後に、また違った雰囲気の土地に出会ったのでした。
カムループスはBC洲の内陸部に位置し、局地的な砂漠地帯に分類されます。ここには一種のサボテンが生息し、気候は暑く乾燥しています。
森に代わって草原が広がり、広大な牧場には多くの牛が飼われています。ここではどこにでもカウボーイがいて、多くの人が馬を所有し、近くの山には自分の馬を駆って出掛けるのです。
4. 感動的だったバンクーバーの町
雄大な景色に家族は感動した |
カムループスに着いた私たちは、この地の電話会社に勤めている、少年時代の友人であるビル・リングンに連絡をとりました。
彼の所に2〜3日滞在し、このカナダの西の地、BC州について、多くの話を聞かせてもらううちに、私たちがBC洲を選んだのは誤りではなかったと感じ始めていました。
ビルは自分の勤める電話会社のトップに私を紹介してくれました。
「ここで仕事をさせてもらえるだろうか」という私の希望に「今は夏季休暇中だから、夏が終わったらまた来て見てみなさい」と答えてくれました。
電話の仕事に関しては豊富な経験のある私は、どうやら仕事を確保できそうだという確信をもつことができたので、リラックスした気分で、それ以降のバケーションを楽しむことができました。
友人とはいえ、いつまでもビルの好意に甘えてばかりいられないので、私たちはバンクーバー市とバンクーバー島にいくことにしました。
BC州クリアウォーターで釣を楽しむ |
フレイザー渓谷の壮大な景色
8月1日だったと思います。私たちはフレイザー渓谷に沿って延びるハイウエイを走りました。この道は1950年ころ開通したもので、壮大な景色を眺めることができます。この渓谷を縫うように延びるフレイザー川は流れが急で、BC洲で最も有名な大河です。
また、産卵のためにサケが遡上することでも知られています。この川の両端には切り立った崖が連なり、この勇壮な景色に私たちは見惚れてしまいました。こんな男性的で美しい景色に出会ったのは初めてだったからです。
フレイザー川はホープという町で終わります。ここから川は流れを緩め、その両側はフレイザーリバーと呼ばれる広い谷間となり、多くの農場や野菜畑が姿を現します。この豊かで美しい谷は、壮麗な町バンクーバーまで続いています。私たち家族が夢みた、美しい町バンクーバーに、どうとうたどり着いたのです。
私たちのグレートアドベンチャーの物語はこれで終わりです。次回はバンクーバー島の旅とBC州でのキャンプ、そしてカムループスでの新しい仕事と私たち一家の生活について話しいと思います。