ログハウスの芸術家 ビルワイエット
日本のログハウス関係の雑誌に、ビル・ワイエットに関するものが何度か掲載されているが、中でも
ウッディライフ誌には8ページに渡り詳細な紹介記事を掲載した。
「ログハウスの世界のクラフトマン、職人というよりは芸術家」
エド・キャンベルの一番の高弟であり、草創の頃から一貫して
エドのログハウス作りを、スタッフとして支えてきた
エドの仕事を手伝うかたわら、BC州のシュスワップ湖のほとりに
1ヘクタール(10000u =約3300坪)の土地を持ち、
その中に
いろいろな建物を造利続けてきた。
- 1. ログハウスの芸術家 その世界
- 2.ログハウスの芸術家 ログハウスを志すまで
- 3.ログハウスの芸術家 夫婦力を合わせて造った家
- 4.サウナハウス
- 5.ジェットバス
- 6.資材乾燥場小屋とトイレ
- 7. カービング
- 8.ビルの工房
- 9.ビルの遊び心(階段と彫刻の例)
1 ログハウスの芸術家 その世界
ビル・ワイエットは、自然の鳥や魚をログに彫刻したり、曲がった木を階段に利用することで
知られるビルダーだ。その彼のログビルディング、そして自然に対するこだわりは彼の自宅
に建つ、8棟の作品に集約されている。
ビル・ワイエットの敷地と建築作品
カナダのBC洲チェイスは、シュスワップ湖の西の端にある人工2000人の小さな町。この町に住むビル・ワイエット、自宅の敷地約1ヘクタール(個人の住宅の敷地面積がこれだからカナダは凄い!) の中に ピースエンピースの自宅をはじめとしてサウナハウスやワークショップなど大小さまざまなログを素材とした 建築を趣味でつくっている ログハウス・メーカー「ログホームズ社」のデザイン・コーディネーターとして、主に階段周りを担当している。
写真上左: ピーセン・ピースの母屋の 正面玄関。 自然の曲がり木を上手く 利用した手すりが 印象的だ
写真 上右:日本の伝統的な木造建築を参考にしたという「門」
写真下: ビルワイヤットと夫人のウエンディ 。 BC洲に来て初めての作品が後ろに見えるログハウス。短い材を有効に 利用して、二人だけでくみ上げた。
2 ログハウスを志すまで
その彼の作品は、常に繊細で、美しく自然のイメージだ。
彼がそれほどまでに自然にこだわり、ログハウスにこだわる理由はいったい何だろうか。
ビル・ワイエット。1941年、オンタリオ州ポートスタンレー出身。子供のころから鳥や魚などの自然が大好きだった彼は大学在学中、動物学を専攻するかたわら、夏の間はオンタリオ州立公園でナチュラリスト(訪れる人たちのガイドや監視の仕事)として働いていた。
そして卒業後も、自然のなかでできる仕事ということで、カナダの国立公園のナチュラリストを続けていた。
彼がスペリオル湖のプカスクア国立公園のチーフ・ナチュラリストとして勤務していたとき、公園の監視員の前哨基地として、ログハウスを手作りしようと提案した。
初めのうちは、仕事の仲間達もログハウスつくりに興味をもち、ログビルディングの練習をしようと張り切っていた。しかし、そのうち仲間達の興味も薄れ、一人抜け、二人抜け・・・結局、最後には
ビルひとりになってしまった。それでも彼は
写真:制作に3年間費やした、ビルの自信作
サウナハウス
本を片手に仕事のない週末だけを利用意して
作り上げることに成功した。
たった一人でやり抜いたそのログハウスづくりはとても面白いものだった。それに対して、公園の仕事の、あまりに官僚的な気風に嫌気がさしていた。それならばと、彼はログビルディングを生涯の仕事にしょうと心に誓ったという。
3 夫婦力を合わせて造った家
「79’年の12月につくりはじめて、80年の4月には、屋根をかけて、住すみだしたんだ。 それで暮らしながら内部を仕上げていった 」
一階106.8平方メートルの平屋建にしたのは、中央の巻きストーブだけで効率よく暖まるゆにするためだという。
それにしても三角形を幾何学的に張り合わせたようなルーフシステムや、さりげない壁 のグリーン、細部に使用した曲がり木など、木を使った遊び心一いっぱいにあふれた家である。
写真:家の内部。レッドシダーを使った「ピース&ピース」という ログハウスの技術を応用している。
4 サウナハウス
そしてもう一棟の自信作はサウナハウス。‘83年〜86年まで3年がかりで製作した大作。 一階がサウナ、その熱気を二階のベッド&リビングルームに直接取り入れて暖房の一助としている造りが心憎い。梁や柱をはじめその他の構造材の組み合わせの美しさといったら他に例をみない。
また、一寸したアクセントで入れられた波型のトリミングや、鳥や鮭のカービング、石づくりの暖炉など、どこを見ても完璧ではないか!
彼のログビルディングのこだわりと研究、そして自然を愛する気持ちによるものだ。
日本建築の継ぎ手や仕口勉強し、ハンティンングやフィッシングを通して、魚や鳥や獣たちとのコミュニケーションをとり、それをまたデザインに生かす。その姿勢あってこそ、彼は素晴らしい作品を生み出せるのだ。
サウナハウス二階のベッド&リビングルーム。
正面にある大きな石の壁が素晴らしい。
写真中右:1階のサウナ。これをハンドメイド出作ってしまうからすごい。
写真下 : ベッドは引き出しつき
横に通る板には鮭の一生のカービングが施されている
5 ジェットバス
屋外のジェットバス。天に向って伸びていくような美しいデザインの構造だ6 資材乾燥場小屋とトイレ
上は資材乾燥の為に作った。幾何学的なデザイン下の写真 ビルが笑いながら扉を開いているのは インディアンのテーピーを
思わせるトイレ。
7 カービング
ビルの建てたログハウスのいたるところに刻まれる、鳥や魚を象徴化したデザインカットのセンスには目をみはるものがあるが、それらのひとつひとつ彼の愛情が、たっぷりと注ぎ込まれているのだ。僕が自然のものを彫刻するのは、その素晴らしさを知っているからさ。自然は人間にとってなくてならない
ものだし、相互に依存し合っていると思うから」
「デザインのアイデアは、みな自然が暗示してくれるのさ。その素晴らしい自然の中で、僕が一番心惹かれるのは鳥のひななんだ。その姿や無限の動きをみていると、本当に興味はつきないよ」
こう語る彼の作品は、どれも大自然のなかに飛び出していきそうなものばかり。そう、ビル・ワイエット氏はログハウスのなかに、自然界の生命を甦らせることができる男なのだ。
そして自然を心から愛する彼にとって、ログビルディングの仕事とは、自然界の恵みにたいする感謝の気持ちの表現なのだ。
写真 カービングの数々。
最近こっているのはフィッシュカービング。大きいもので50時間。
8 アトリエとワークショップ
彼のデザインやカービングのアイデアは、彼の自宅脇のアトリエで生まれる。 そこには彼が最近こっているフィッシュカービングや、 野鳥のデッサンなど、 作品を作るための見慣れないマテリアルが、ごろごろとしている。 その中で、あれこれと説明してくれる。 「ログハウスに使用する木は、1000年以上も生きられるはずのものだから、その木を使うときには、自然に敬意を表しつつ作業しなければならない。それで上手にハンドメイドでできたら、それはビルダーのモニュメントとなるだろう。
長い年月をかけて自然の中で育まれた木は、森に生きた時代の強さと平安さを、ログハウスになっても保ち続けることができるのだ。だからこそ、ログハウスは自然のなかの人間の棲み家として最も適している」
これが彼のログビルディング哲学である。ナチュラリストからログビルダーに転向してから13年経つ今も、ログにたいする、そして自然にたいする取り組み方も変わらない。
「私にとってログビルディングの全てが喜びなんだ。ログに向かい、新しい試みにチャレンジするときの満足。新しい知識、技術、そしてクラフトマンシップの誇りから得る満足。傷ついた筋肉の痛みさえも、それは満足となる。私がログビルディングから感じることは全て喜びに通じるのだ」 こういってビルは笑った。
写真 上:ビルノアトリエ。ここで数々の作品が生み出される
下右:ワークショップには大型の工作機械も並んでいる
9 ビルの遊び心(札幌に作った家にビルの階段)
ビルの作った階段(札幌喫茶店と併用の住宅)
札幌に家を作ったとき、ビルはこんな階段を作ってくれた
自然の丸太や曲がり木を上手く使った階段である
まるでパズルのように、組み合わせるのに苦労
した。
「どうだ、上手く組めたかな」とにやりと笑う顔が
浮かんだ。
ビルに頼むときは一切注文をつけない。
どんなものが送られてくるのか、着いてみないと
我々もわからない。
玄関扉にユーモラスな彫刻
ある家の扉に彫刻して欲しいという依頼があった。
カナダらしさ、オーナーが趣味なので、釣りをテーマにして
それ以外の内容なすべて任せる。
送られてきたのが下の彫刻である。
彫刻は扉の裏と表に彫られ 「釣り人と熊の駆け引き」を表現した、ストーりー展開になっていて
ビルのサインでそのストーリを書いたものを一緒に送ってくれた。
ビルらしい、遊び心、いたずら心に溢れたものだった。
オーナーは大喜びで、ストーリーを額に入れて飾ってくれた。
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