
プロレスラーのような大男ケン、夏休みを利用して来ていたハイスクールの生徒。 名も知らぬインディアンの少年、ちっともうまくむけなくて、いつも怒っていたピーラー、たくさんのピーラーがいた。
全身を伸ばしドローナイフを両手に握り、一気に見を縮めるようにして皮をむいていく。
遠くにいても、皮をむいていくシュッシュッという音が、規則正しく聞こえてくるようだった。
皮むきという作業はとても地味で目立たない仕事なのだが、ログハウスにとって皮むきは、最も重労働でかつ重要な作業だと思う。
誰もいなくなったワークサイトで、彼らが大木と向き合っている後姿が、今でも目に焼き付いている。
朝、誰かが忘れていった清涼飲料水のペットボトルが、むかれたばかりのログに立てかけられたままになっていることがある。
階段を造り、手摺を造り、彫刻を施してやる。一軒のログハウスを完成させるために、私達は色々考え、想像し、いつものように悩み、そして手間暇をかけて作業を進める、サンダーで木口や開口部、ログ壁のダメージなどを調整し、黴止めスプレーを噴射し、最後に通しボルトや電線の穴加工をしながらコンテナーやトレーラーに積み込む。
ログハウスを手造りするということは、結構手間のかかる作業の連続なのです。そしてこれこそが手づくりのハンドカット・ログハウスの醍醐味なのではないかと思います。
同じような一本の原木が製材所でオートメーションの製材機に飲み込まれ、あっと言う間にツーバイー材の製品に姿を変えたり、マシンカットのログ部材に製材されていくのとは、基本的に考え方や作業工程が異なるに違いないのです。
一本の原木から作り出される製品の付加価値は様々です。
バリュー・アデッド・プロダクツ(Value added products)という言葉があります。
訳せば、「限られた資材の中で、付加価値の高い製品を作りだす」ことを意味します。
カナダで生活していたころ、わたしたちが真剣に考えていたことです。
カナダ政府は、原料としての原木の輸出をやめてしまいました。カナダで生育する原木に少しでも手を加え、その価値を高め、製品として輸出していこうという考え方です。
もちろん外貨の獲得も目的の一つでしょうが、同時に天然資源の重要さと人々の技術の向上を目指したものでもあるのです。
カナダの社会は、私たちのいた「エド・キャンベル・ログホーム」のような、たくさんのちっぽけな会社(Small Business)の集合体です。
付加価値が高められ、品物がよい値段で売れれば、そこから得られたお金は確実にその地方の人々の生活に反映されます。
ログハウスの温かさや魅力