延べ15万人お観客を集め、ショーは成功裏に終わった。
多くの観客を楽しませてロガースポーツの達人達は
カナダへと帰っていった。
ロガーの末裔たち 第1回 誇り高き男たち
ロガーの末裔たち 第2回 ロガーたち
ロガーの末裔たち 第3回 ティンバーショーとは
ロガーの末裔たち 第4回 ショーの準備と開演
ロガーの末裔たち 第5回 樹齢3000年の巨木
第ロガーの末裔たち 第5回 目次
1観客数は延べ15万人
あとは時々事務局の担当者に様子を聞くために電話をいれるだけ。その度特別な問題もなく順調にやっている。
人気が人気を呼び毎回大変な人を集めていると聞き、苦労した甲斐があったと喜んでいた。
2ヶ月の緑化フェア開催期間の前半の1ヶ月間、このティンバー・ショーが催された。
台風で開催不能となった3日間を除き毎日4回、合計100回以上やったことになる。
観客数は延べ15万人に達し緑化フェア事務局としては十分な成果であり、感謝してもらえた。
ロガーショーに携わり、ロガースポーツマンたちと触れ合うことが出来たのは、私の人生に新たな一頁を、それも特別にエキサイティングで鮮やかな頁を加えてくれた。
彼らは皆スポーツマンらしく飾らず、男らしくユーモアに溢れた実に爽やかな男達だった。
開催直前の準備と、開催してから軌道に乗るのを見届けるまでの延べ5日間という短い間だけだったが、
密度の濃い触れ合いだった。
すっかり親しくなった。
私自身が学生時代ハンマー投げに熱中していた経験を持つ大のスポーツ好きで、
その上今はログハウス作りを仕事としている。直接ログハウス作りに携わっていなくても、ロガーの末裔である彼らは日常的にチェーンソーを使う。(ショーの合間にもアトラクションとしてチェーンソーを器用に操って丸太に彫刻をして見せてくれた。
ログビルダーとロガースポーツマンはいわば兄弟のようなもの、最初から通い合うものがあったのであろう。
ロガースポーツを始めたきっかけやトレーニング方法等、興味深い話をいろいろ聞くことが出来たのも
収穫である。
他のあらゆるスポーツと同じように、一流になるためには長年のたゆまぬ努力が必要である。
そして何よりもロガースポーツを愛し心から楽しんでいることを、生き生きと演じる彼らの姿から感じ取った。
2.ロガースポーツを体験
リハーサル中にいくつかの種目を体験させてもらったのも得難い体験だった。
お陰で各種目それぞれの面白さや難しさを垣間見る事が出来、ロガースポーツに対する興味を深めた。
木登りでは冷や汗をかいた(第一回参照)。マイク・ロジャーソンは用具のつけ方、
登り方のこつを丁寧に教えてくれた。
写真:
木のぼりに挑戦する著者。
マイクが装備の付け方を教えてくれた
フィル・スコットはログバーリングを教えてくれた。
水に落ちても良いようにと短パンに着替え、手をとってもらって丸太の上に乗った。水に浮かぶ丸太はあまり太くない、直径30cmほどだろうか、その分不安定である。
フィルが丸太の上であまりに軽々と動き回るのを見ていて、少しは自分にも出来そうな気がしたのだが、
これが大間違い、おそるおそる丸太に乗ったのだが、1秒ともたずに水中にドボンである。
アックス・スローイングでは何と一発で的の真ん中に命中し喝采をうけた。まさしくビギナーズラック、
これで木登りやログバーリングで無様な姿をさらすという失態を、少しはカバーできたかな。
3.デニーからの手紙と巨木
ショーが終わり祭りの後の寂しさに、ほんの少しばかり感傷的になっていたある日、デニー・ハーリングから手紙が来た。
デニーは兄マイクとともに参加したログバーリングの選手である。
無口で一見取り付き難く思えたが、私がログハウス作りをしている事を知り興味をもっていろいろ話しかけてきて急速に親しくなった。
いろいろな話の中で「実は最近自分でログハウスを作った」いう。
写真を送るよと言ってくれたのだが、その約束を守ってくれたのだ。
デニーの手紙の中にそのログハウスの写真と一緒に面白い写真が同封されていた。
巨大なレッドシダーの写真である。バンクーバー島の南端スークにある彼の住まいから車で1時間くらいの所にあるという。彼の説明によると、胸の高さで周囲21m、高さはおよそ63m、推定樹齢3000年とあった。
デニーから送られた巨木の写真。ウエスレッドシダー(推定樹齢3000年)
以前バンクーバーの古本やで買ったロガーの本(「old days of logging」)の中で紹介されていた
とてつもない巨大な丸太を思い出し比べてみた。
4フェイク ロガーのいたずら
切り倒され横たわっている巨大な丸太の上で、ロガー達がそれぞれのポーズで立っている。まるで捕らえられて横たわるガリバーに群がる小人たちのように。
直径はなんと25フィート(約7.6m)樹種はファー(もみ)とある。
しばし見とれていて何気なく説明文を読むとmagnificent fake とあった。
「ん・・フェイクってどんな意味だっけ?」と辞書をひくと「にせもの、ペテン師」とある。
読み進んでようやく理解できた。
この写真をめぐってはいまだに真偽論争が繰り返されているが、一応“だまし絵”であるとの
結論が出ているのだという。
ロガー達はスーパーインポーズされているらしい。
バンクーバー島のロガー達が、ライバルであるアメリカのロガー達にいたずらを仕掛けたのだ。
「どうだB・C州にはこんな凄いのがある、どんなもんだい」という訳である。
アメリカのロガー達はさぞ悔しがっただろうがやがて冗談だと分かり大笑いしたに違いない。
それにしても何ともおおらかでユーモラスな騙しではないか。
巨木に群がるロガーたち
デニーから送られてきた巨木は周囲21m、仮に断面が正円と仮定すると直径は6.7m、
かなりこの木に近いことになる。
断るまでもないがこれはフェイクではない。
手紙の最後の方で「カナダに遊びに来る機会があったら案内するよ」とあったが、いまだに実現していない。 いつかはこの巨木を見てみたいものだと思っているが、さてそれはいつの事になるやら。